アレルギー性鼻炎
当クリニックでは花粉症を始めとしたアレルギー疾患の治療に力を入れております。
治療にあたり、アレルギー性鼻炎の病態や治療内容についてお書きしたいと思います。

鼻腔の機能

鼻の機能は主に匂いを嗅ぐこと、空気を吸うこと、声を調整することが挙げられます。
空気を吸う際、空気を温めること、空気を湿らせること、空気中のちりや微生物を除去することが鼻の重要な役割になります。これらの作用により、下気道・肺に対する負担や感染のリスクを減らすことができます。アレルギー性鼻炎とは、それらの正常機能が障害される症状を来しますので、鼻呼吸ができることは、日常生活においてとても大切なことと言えます。

アレルギーについて

罹患率につきましては、気管支喘息が3%、アトピーが10%、結膜炎が15%に対し、アレルギー性鼻炎は日本人の40%が罹患していると言われています。また近年の低年齢化も問題となっており、未成年のうちに3人に1人強が罹患していると言われています。

アレルギーマーチとは?

低年齢化とともに問題となるのがアレルギーマーチという概念です。乳幼児期からのアトピー、食物アレルギーに始まって、年齢を重ねると共に小児喘息、気管支喘息を発症していく流れを言います。最近では、治療の低年齢化に伴い、小児でも服用可能な薬も増えてきており、早い段階での治療介入が可能となっておりますので、鼻症状で困っているお子さんをお持ちの親御さんも、気兼ねなくご相談ください。

アレルギー性鼻炎とは?

アレルギー性鼻炎とは、アレルゲン(アレルギー症状を引き起こす原因となるもの)を吸い込むことによって、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状を引き起こすアレルギー疾患です。アレルゲンという外敵から体を守ろうとする免疫反応が過剰に起こってしまい、そのような症状を引き起こします。アレルギー性鼻炎には「通年性」と「季節性」があります。

通年性アレルギー

季節に関係なく年中発症する鼻炎です。原因は、ハウスダスト、ダニなどが多いとされていますが、カビが原因になることがあります。

季節性アレルギー

ほとんどは「花粉症」であり、スギ・ヒノキ・ブタクサ・ヨモギなどの花粉が原因となっています。どの植物の花粉がアレルゲンになっているのか知ることで対策がしやすくなります。

アレルギー性鼻炎の症状

鼻詰まり(鼻閉)、鼻水、くしゃみが主な症状になりますが、その他付随した様々な症状を呈し、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。鼻のムズムズやくしゃみ、鼻汁は集中力の低下を来しますし、鼻閉による睡眠障害からくる日中の眠気などは仕事や学力に影響を及ぼします。鼻を強くすすったりかむことで滲出性中耳炎を来したり、鼓膜が破けることもあります。鼻の粘膜が腫れることにより、二次的に副鼻腔炎(ちくのう症)を併発したり、口呼吸により咽頭や気管支粘膜の保湿が保たれなくなって、咽頭炎や気管支疾患の合併を来したりすることもあります。
また、鼻閉による嗅覚障害は味覚の低下を引き起こし、生活の質を低下させます。鼻がかゆくて触ったり、鼻をかむことの刺激で鼻出血を繰り返したりしている方も少なくありません。これらの症状が当てはまる方はアレルギー性鼻炎の可能性があります。

アレルギー性鼻炎の治療

アレルギー性鼻炎の治療は患者さんとのコミュニケーションをベースとして、抗原の除去と回避、薬物療法、免疫療法、手術療法という、4本の柱からなっています。

薬物療法

局所作用薬として、点鼻ステロイド薬、全身作用薬として、抗ヒスタミン薬が用いられます。抗ヒスタミン薬の副作用として、眠気が問題となることもありますが、最近では眠気が出にくい薬も増えてきており、安全性を確保した上での治療が可能となっております。

舌下免疫療法

唯一の根治療法と言われている舌下免疫療法についてのお話しです。
2014年から実用化された治療ですが、最近では5歳以上の小児にも適応が拡大されています。問題となる副作用ですが、今まではアナフィラキシーショックなどの重篤な副作用は報告されておらず、口腔内のかゆみや腫脹、口内炎などの局所粘膜症状の報告に留まっています。しかし、その症状の程度や発生時期によっては中止や追加治療などの必要性も出てきますので、慎重な投与が必要となりますし、状況に応じて他科との連携治療が必要になることもあります。

治療対象

現時点で、免疫療法の治療対象はスギ花粉症と、ダニに対するアレルギーのみです。

治療開始の流れ

初診時に問診・診察を行い、採血にてスギやダニのアレルギーがあることを確認させていただきます。診察・採血・処方を含めますと、初診でのお支払いは3割負担で5,000円強かかりますが、他院での直近の採血結果をお持ちでしたらご持参いただけますと、当クリニックでの採血は必要ありません。

お薬について

スギ花粉症はシダキュア、ダニアレルギーはミティキュアというお薬を使用します。治療開始時に、低用量のお薬を院内でご使用いただき、状態観察のため30分程院内でご休憩いただきます。次回1週間後に増量を行い、以後は1か月に1回の処方の為の受診で構いません。根治を得るには3年の継続が必要と言われております。
2018年に治療適応の改定があり、5歳以上の小児への適応拡大がみられています。喘息についてはまだ保険適応はありませんが、喘息管理予防ガイドラインにダニアレルゲン免疫療法の記載が追加され、また免疫療法により吸入ステロイド使用の軽減、喘息症状スコアの改善が見られ、更なる適応の拡大が望まれます。ダニに対するアトピー性皮膚炎にも効果があると言われています。

手術療法

保存的治療でも改善が見られない場合、手術の適応となるのですが、特に鼻閉型で、鼻腔形態異常などの可能性が疑われる症例は手術をすすめております。手術のメリットとしましては、生活の質の改善や服用薬の減量、副鼻腔炎や嗅覚障害の予防・改善が挙げられます。
一般的に行われている手術としましては、下鼻甲介手術、鼻中隔矯正術などの鼻腔空間の形成手術、下鼻甲介粘膜焼灼術や後鼻神経切断術などがあります。当クリニックではレーザーによる鼻粘膜焼灼術のみ行っております。

福岡大学病院との連携

当クリニックでは、全身麻酔を用いた手術加療は行っておりませんが、福岡大学病院と連携を取っておりますので、ご希望の際はご紹介させていただきます。院長が毎週木曜日に福岡大学病院耳鼻科外来を行っておりますので、木曜日でしたら大学病院でも院長の診察が可能となっております。
当クリニックでは患者さん主体に意思決定ができる丁寧なご説明を心がけております。鼻閉型で重症な方、治療が長期間に及ぶ方、職業上眠気などの副作用を望まれない方などは手術の適応となる可能性が高いですので、是非ご受診いただけますと幸いです。
受験を控えたお子さん、職業上、日中の眠気や集中力の低下を来したくない方などは特に積極的な治療を推奨しておりますので、気軽に受診していただき、ご相談いただけますと幸いです。